欧州進出で使える公的支援と補助金は何か? ジェトロ・自治体・各国の投資誘致機関の使い方

公開 2026年7月1日読了 約6分著者 貴志 優紀(YKBridge 代表)

要点

欧州進出で使える公的支援は、思っているより多く、思っているより使われていません。ジェトロは海外展示会のジャパンパビリオン、現地事務所でのブリーフィング、専門家による伴走支援を提供し、日本企業の海外展開を支援した件数が成果指標になっているため、相談は歓迎されます。東京都をはじめ多くの自治体には、海外展示会の出展費を助成する制度があります。国の補助金には、海外展開を対象に含むものが年度ごとにあります。欧州側では、オランダのNFIA、ドイツのGTAI、フランスのビジネス・フランス、英国のビジネス・貿易省など各国の投資誘致機関が、拠点を置く企業に無料で立地選定や制度の案内をしてくれます。注意点は三つです。補助金は後払いで、採択前に発注した費用は対象外になること。締め切りは展示会の3〜6か月前に設定されていること。そして、補助金があるから出展する、という順番にしないことです。

「補助金は手続きが面倒で、額も小さい」。そう言って使わない企業と、毎年きちんと使っている企業があります。

欧州進出の初年度の費用は数百万円から1,000万円台です。このうち展示会の出展費は大きな割合を占め、自治体の助成を使えば出展費の3分の2が戻ってくることもあります。ジェトロの現地事務所でのブリーフィングは無料で、専門家の伴走支援も申請すれば使えます。使わない理由は、知らないか、締め切りを逃しているか、のどちらかです。

この記事では、欧州進出で使える公的支援を日本側と欧州側に分けて整理し、使うときの注意点をまとめます。

公的支援は、なぜ積極的に使うべきなのか?

理由は、費用が下がることだけではありません。

支援機関の側に、支援する動機があるからです。ジェトロや自治体の海外展開支援は、日本企業の海外展開を支援した件数や、支援先の成約件数が成果指標になっていることが多い。つまり、御社が相談に行くことは、相手にとっても歓迎すべきことです。「忙しいところに相談して申し訳ない」という遠慮は要りません。

また、支援機関を通すと、御社が「公的機関が支援している企業」として相手に紹介されます。欧州の企業にとって、ジャパンパビリオンに出展している企業や、ジェトロの現地事務所から紹介された企業は、まったく知らない日本企業より信頼しやすい存在です。知名度のない段階では、この信頼の補強が役に立ちます。

日本側の支援は、どこで何が受けられるのか?

機関・制度 主な支援 費用 向いている段階
ジェトロ(本部・国内事務所) 海外ビジネス相談、市場情報、海外展示会のジャパンパビリオン出展、専門家の伴走支援 相談は無料。パビリオンは出展料の一部負担 検討から出展まで
ジェトロ(欧州の現地事務所) 出張時のブリーフィング、現地の商習慣・規制の情報、現地支援機関の紹介 無料 出張・商談の前
中小企業基盤整備機構 海外展開の相談、専門家の派遣、セミナー、海外展開に関するウェブ上の情報提供 無料〜一部負担 検討の初期
国の補助金 海外展開を対象に含む設備投資・事業展開の補助(年度ごとに制度と枠が変わる) 補助率1/2〜2/3が多い 投資を伴う段階
自治体(都道府県・政令市) 海外展示会の出展費助成、海外展開の相談、現地での商談会 助成率1/2〜2/3、上限数十万〜百数十万円が多い 展示会への出展
日欧産業協力センター 日EU経済連携協定(EPA)の活用相談、欧州の規制情報、ウェビナー 無料 輸出の実務

とくに使い勝手がよいのは、次の三つです。

ジェトロの現地事務所でのブリーフィング。 欧州の主要都市にある事務所で、出張のときに市場の概況、商習慣、規制、現地の支援機関について話を聞けます。無料で、事前に申し込めば1時間ほど時間を取ってくれます。初めて行く国では、商談の前日に受けておくと、相手の国の文脈が分かった状態で商談に臨めます。

ジャパンパビリオンへの出展。 ジェトロが主要な海外展示会にまとめて出展し、日本企業が1小間ずつ参加する形です。出展料の一部をジェトロが負担するため、単独出展より安く、設営や通訳の手配もまとまっています。日本企業が集まっているので来場者の目にも留まりやすく、初めての出展には向いています。一方で、御社の業界の買い手が来る展示会でなければ意味がないので、パビリオンがあるから出る、ではなく、出たい展示会にパビリオンがあるかを確認する順番です。

自治体の海外展示会出展費助成。 東京都をはじめ、多くの都道府県と政令市に、海外展示会の小間料、装飾費、輸送費を助成する制度があります。助成率は2分の1から3分の2、上限は数十万円から百数十万円が多く、制度によっては年に複数回使えます。御社の本社がある自治体の産業振興部門か、中小企業振興公社に聞いてください。制度の名称と金額は年度ごとに変わるので、毎年確認が必要です。

国の補助金については、年度ごとに制度の名称、対象、枠が変わります。海外展開を対象に含む補助金は毎年何かしらありますが、多くは設備投資や新事業の展開が主目的で、展示会の出展だけを対象にするものは少ない。御社の計画が投資を伴うなら、商工会議所か中小企業診断士に、その年度の制度を確認するのが確実です。

欧州側の支援は、どこで何が受けられるのか?

欧州の各国には、自国への投資を誘致する政府機関があります。オランダのNFIA(Netherlands Foreign Investment Agency)、ドイツのGTAI(Germany Trade & Invest)、フランスのビジネス・フランス、英国のビジネス・貿易省(DBT)、ベルギーのフランダース投資貿易公社などです。州や都市にも、ノルトライン・ヴェストファーレン州やアムステルダム市のように、独自の誘致機関があります。

これらの機関は、御社がその国に拠点を置くことを検討している場合に、無料で次のことをしてくれます。

立地の候補と、オフィス・工場・倉庫の情報。法人設立の手順と、公証人、会計事務所、法律事務所の紹介。税制、人材、ビザ、優遇制度の情報。現地の業界団体やクラスターの紹介。そして、多くの場合は日本語を話す担当者がいて、東京に事務所を持っています。

彼らの成果指標は、自国への投資額と雇用の創出です。だから、拠点を置く可能性がある企業には熱心で、ときに複数の国の機関が御社を取り合う形になります。これは御社にとって、情報を無料で、比較しながら集められる機会です。

一方で、彼らの役割は投資の誘致であって、御社の製品の販売先を探すことではありません。顧客の紹介を期待して相談に行くと、期待外れになります。販売先を探す段階では、ジェトロ、業界団体、展示会、そして現地のパートナーの方が役に立ちます。投資誘致機関は、「どの国に拠点を置くか」を考える段階で使う機関です。

もう一つ、欧州側で見落とされがちなのが、日EU経済連携協定(EPA)です。2019年の発効以来、日本からEUへの工業製品の関税のほとんどが撤廃されています。使うには原産地の申告が必要で、手続きを知らずに関税を払っている企業が実際にあります。これは補助金ではありませんが、使えば費用が確実に下がる制度です。詳細はジェトロや日欧産業協力センターで確認できます。

申請で、何に気をつけるべきか?

公的支援、とくに補助金を使うときの注意点は三つです。

後払いである。 補助金は、御社が費用を払い、実績を報告したあとに振り込まれます。手元の資金は先に必要です。

採択前に発注した費用は対象外。 多くの制度では、申請して採択の通知を受けてから発注した費用だけが対象になります。展示会の出展申込みを先にしてしまうと、対象外になることがあります。締め切りは展示会の3〜6か月前に設定されていることが多く、年度の初め(4〜6月)に募集が集中するので、翌年度の展示会の計画は前年の秋には立てておく必要があります。

補助金ありきで出展しない。 「補助金が取れたから出展する」という順番は、展示会の選び方を誤らせます。出たい展示会があって、その費用を補助金で下げる。この順番です。

補助金の額は、欧州進出の総費用から見れば一部です。しかし、初年度の費用のうち「展示会」と「出張」は大きな部分を占め、そこに助成が付けば、同じ予算で商談の回数を増やせます。小さく始めて、一次情報を集め、顧客ができてから固定費を増やす。この進め方において、公的支援は「一次情報を集める回数」を増やすための道具です。使わない手はありません。

FAQ

この記事に関するよくある質問

  • 使えます。むしろ中小企業の海外展開支援がジェトロの主要な役割の一つです。海外ビジネスに関する相談は無料で、国内の各都道府県に事務所があります。欧州の主要都市にも事務所があり、出張時に現地事務所で市場の概況や商習慣についてのブリーフィングを受けることができます。専門家が一定期間伴走する支援制度もあり、こちらは申請と選考があります。

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